インタビュー&リポート

MORIMOTO AKIRA

森本 旭 さん

美容師・写真家 フィレンツェ在住


森本旭さん プロフィール

写真家・美容師
岡山県出身。
高校卒業後、美容専門学校に通い美容師国家資格を取得。その後、大阪の美容室に勤務し経験を積む。
2014年に渡伊し、美容師としてミラノで活動を始める。イタリアでの生活と多くの人との出会いから大切なことを学び、大きな決断をする。現在は美容師として生計を立てながら、写真家としてフリーランスでの活動を続けている。

-フィレンツェに来たのはいつですか。

イタリアに来たのが2014年の7月で、初めはミラノでした。フィレンツェには2016年にやって来ました。

-イタリアに来たきっかけは。

会社を辞めて落ち込んでいたことがきっかけです。
自分の力の無さを痛感していました。「迷惑をかけるばかりで、誰の役に立てるのだとうか」そんなふうに自分を責めていましたね。
それをどうにかしたかったのと同時に、夢を諦めきれないという思いもあり、海外に出ることを決めました。 田舎育ちの僕は、もっと広い世界を見たいという外への憧れが強かったんです。イタリアに決めたのは、なんとなくでした。

幼少時代の森本さん。

-ミラノでの様子を教えてください。

ミラノのオルティカというところで活動をしていました。友人や地元の人がお客さんです。スタジオに庭があったので、天気の良い日は外で散髪をしていました。それはとても開放的で、楽しかったですね。
直接依頼を受けて、僕の家かお客さんの家で散髪をするんです。お客さんに喜んでもらいたい、その一心でやっていましたね。
生活の面では、言葉や文化の違いを理解するのに苦労しました。日本で良いとされていることが通用しなかったり、逆に日本では非常識な事がここでは普通だったりするので、慣れるまで大変でした。

-イタリアに来てどうでしたか。

一番感じたことは、ここに住む人が、みんな素直な気持ちで動いているということです。自分のやりたいことをちゃんと持っています。
「君のそれいいね」とか「すばらしい意見を持っているね」って、自分にないものやお互いの違いを尊重しあっています。忖度がないんですよ。
“みんなといっしょ”なんていう考えを持っていると、逆にあまり信用されません。
そんな彼らといっしょにいて、決心できたことがあるんです。

-どんな写真を撮りたいのですか。

見たまま、ありのままの瞬間を撮りたいです。 あえて良い状況を作らなくても、その瞬間は日常のなかにたくさん隠れています。
そういう瞬間をどんどん見つけていきたいですね。
ドキュメンタリーや報道写真などもやりたいと思っています。
たいして意味はないんだけれど、なんだか見入ってしまうような作品は撮っていて楽しいですね。

-アートが好きなのですね。

はい。
変な言い方ですが、できるだけ意味のないものが作りたいんです。

-なんだか森本さん、輝いていますね。

日本で美容師を続けていれば、将来を心配せずに暮らせていたかもしれないですね。でも今のように素直に自由に生きていられるかといったら、違ったでしょうね。私は人の言うことを聞けるタイプではありません。
みんなと歩む道が違っても、自分の目で見て、感じて、素直に生きていきたいんです。この先いろんな苦労もあると思うけど、自分で自分を幸せだなと思える日々を重ねていきたいですね。


取材:山口絵美