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ショートストーリー

老夫婦のありふれた日常

投稿者:老人Kさん

りんご


夫 「かなり昔のことだけど、りんごをかじると歯ぐきから血が出ませんか? ってコマーシャルがあったよね」
妻 「あったわね~。それが、どうかしたの?」
夫 「あの頃は、りんごを丸かじりしてたなあって……」
妻 「そういえば、いつのまにか皮を剥かないと食べられなくなったわよね。でもアメリカの人は、今でもりんごをかじってるのよ」
夫 「え~っ、ほんと!なんで! なんで、そんなこと知ってるの?」
妻 「……」
夫 「なんでだろう」
妻 「そのスマホ、ひっくり返してみたら?」
夫 「え? あ? ……そうかあ。かじったりんご、かあ」
妻 「ジョブズさんもそうだけど、ニュートンさんもアップル。おまけにニューヨークはビッグ・アップル、でしょ」
夫 「……でも、ぼくは、みかんのほうが好き!」
妻 「なんで、途中からそうなるの!」
夫 「………ゴメンなさい」
寸評:素直になれない年頃はなんども訪れるようです。

間のわるさ


夫 「 どっかの会社に行ってさ。帰るときに、エレベーターの前まで見送られることがあるんだ。
  そのとき、あいさつはもう終わっちゃってるのに、なかなかドアが閉まらない。ちょっと間が空いちゃうんだよね」
妻 「それが、どうしたの」
夫 「だからさぁ。どこを見てたらいいかとか、むりやり閉めちゃった方がいいのかとか。
  ……あの“間” はどうしたらいいかのかなぁ」
妻 「別に。フツーにしてりゃ、いいんじゃないの」
夫 「いろいろ考えたんだけどさあ、これは日本人同士だからだと思うんだ。日本人はそんなに相手の目を見ないしね。
  そうだよ、これはやっぱり、日本的まなざし文化の特徴なんだよ」
妻 「(始まった。いつものこじつけ……)」
夫 「うんうん、 そうだ。きっとそうに違いない」
寸評:解釈はともかく、解決したのかどうか?

流行語大賞


夫 「あのさぁ、今年の流行語大賞のことなんだけどね、“都民ファースト”はどうかなぁ? 有力候補だと思うんだけど」
妻 (……また、役にも立たないこと考えてんだ)
夫 「流行語大賞は日本全国が対象だから、“都民” だとダメかなあ。だったら、何とかファーストにすればいいんだ!」
妻 「わたしは、古新聞をまとめてください、って言ったんでしょ。こんなに散らかして。いろいろ調べるのはいいけど、片付けながらにしてよね」
夫 「それって、“片付けファースト” ってこと?」
妻 (まだ言ってる……)
寸評:なんとなく期限切れになりそうな。

ヤカン


夫 「あのさあ、このヤカン、ダメだね~」
妻 「………」
夫 「こう注いでると、まだ湯が残ってるのに、蓋が落ちてしまうよ。
  見てて。 ほら、落ちるだろ」
妻 「………」
夫 「湯がぜ~んぶ無くなって、それ以上傾けてから落ちるのならわかるんだけどなあ。これにはやっぱり、構造上の問題があるよねえ」
妻 「あなた、何やってるの。 蓋は片方の手をそえれば落ちないの!
  もう、水を無駄にしないでよ」
夫 「だからさあ、右手をこう……」
妻 「いいのっ! それで。……わたしはお茶を淹れてほしいのよ」
夫 「……ゴメンなさい」
寸評:さて、どっちが不良品?

ブルームきゅうり


夫 「ただいまぁ、行ってきたよ」
妻 「おそかったのね」
夫 「3軒目のスーパーでやっと見つけたよ。じゃ~ん! これがブルームきゅうりだあ!
  トゲがあるし、色も違うし、これこそ昔ながらの美味しいきゅうりなんだよ。 アハハハ」
妻 「そう、見せて。……で、もう一つはどこ?」
夫 「どこ、って。だから、これがきゅうりで、こっちが……」
妻 「あのね、あなた。わたしはきゅうりとレタスを買ってきてって言ったでしょ。
  これはキャベツじゃないですか!」
夫 「ほ?……だっけ。 新キャベツって、なんかレタスに似てるよね。アハハハハ」
妻 「………」
夫 「………ゴメンなさい」
寸評:この方には、和牛と言って豚肉を出したみたい。