
2019年度
フレックスジャパン×文化服装学院
産学協同プロジェクト(Part1)
a business-academia partnership

春、桜が満開のころ、今年も「ファッション未来塾」が開講します。
アパレルメーカー《フレックスジャパン株式会社》とファッション専門学校の雄《文化服装学院 ファッション工科専門課程アパレルデザイン科メンズデザインコース》による産学連携の講座です。
企業と学校の産学連携は、今ではそう珍しいものではありませんが、こちらの講座は今年で16年目と、長く続く連携プロジェクトとなっております。
「ファッション未来塾」と題したこの講座、カリキュラム作りから授業の進行・制作までを、企業と学院が協業して行うもので、4月からスタートして約3か月の間、フレックスジャパン株式会社(以下敬称略)が取り扱う主要品目の“メンズシャツ”を中心に学ぶ講座です。
企画・パターン(型紙)については、フレックスジャパンの社員らが講師を務めます。一方、文化服装学院はメンズデザインコースの学生23名(男性10名、女性13名)が授業にのぞみます。
今年はクラス23名中11名が海外留学生と、日本でファッションを学ぶ学生たちも、年を追うごとに国際色豊かなクラスへ発展しています。
生徒は4つの班に分かれ、各班ごとに課題・テーマにそったシャツを作成し、最終のプレゼンテーションで作品を発表をします。
授業にはそれぞれ専門の講師を招き、商品知識や企画・デザイン、パターン(型紙)、プレゼンテーションに関する指導を受けます。
通常一般の授業では、課題や制作は学生「個人」に与えられるため、仲間同士「グループ」で取り組む課題はあまりありません。
ところが、いったん社会に出れば先輩後輩の上下関係や男性女性など、様々な人たちとコミュニケーションを図らなければなりません。
ましてや、立場のちがったお客様と、良好な関係も築いて行かなければなりません。
この講座は、ふだんは友達だけれども一人一人がグループ内で自分の意見をぶつけ合う。言わば仮想の社会体験ができることも一つの特長です。
考え、悩み、ときには意見が合わずに仲間とケンカしてしまい、口も利かなくなって課題が進まなかったり。
こんなに時間をかけて一つの作品を仕上げることは、学生生活の中でも、そう多くはないかもしれません。
産学連携を通して学生たちが協力しあい、そして作り上げた作品を企業に提案する。その3か月間に密着取材しました。


Part1
第1回目の授業はフレックスジャパンの企業紹介から始まります。いま現在手掛けている数々の商品や、今後の企業活動などのお話がありました。
そして、講師からは今年度の課題(テーマ)が発表され、「ファッション未来塾」の開講となります!
今年のテーマは「日本のシャツ」
来年2020年は、いよいよ東京オリンピックが開催されます。
いま、日本は訪日外国人が年々増え、オリンピック開催期間中にはその数がピークになるであろうと予想されています。
そこで今回の産学共同プロジェクトは、世界の人たちに向けて、日本に暮らす私たちが「これだ!」と胸をはって紹介できるシャツが何なのかを、この機会に考えてみましょう。
「日本のシャツ」っていったいナンなのさ!?
フレックスジャパンから発表されたお題目は、「日本のシャツ」。
サッパリとしたテーマですが、考えれば考えるほど、なんだかとても奥が深そうな。。。
発表直後のみんなの戸惑う表情が、少し経過すると何やら話し声に変わります。
「ねえねえところでさ、ニホン って言ってた?」「いや ニッポン でしょ?」 ザワザワ・・・。
兎にも角にも、「ファッション未来塾」の開講です!
学生たちは、まず班ごとにわかれます。1班5~6人で、全4班のグループをつくります。
冒頭にもご紹介しましたが、今年度のクラスは全23名中、11名が留学生。
国際化は文化服装学院ではそう珍しいことではありませんし、留学生たちも世界各国から、ファッションの勉強をしに日本へ来ています。
そんな中、留学生たちも「日本」について一所懸命に意見交換をします。
日本人学生が気にも留めないような、日本の“○○”を調べ上げ、意見を持ち寄ります。
日本に留学するぐらいですから、とても興味があるようですね。
『ファッション未来塾』講座の最終回は、長野県千曲市に本社をかまえるフレックスジャパンで開催します。
「最終プレゼンテーション」という発表の場を設け、完成した作品をファッションショー形式で発表し幕を閉じます。
クライアント(フレックスジャパン)に伝えるデータの作画やプレゼンテーションの論法を教えてくださるのは、非常勤講師の 羽田 武幸 先生。
それぞれが最終発表の地“長野”を目指して、この授業にのぞみます。
そして、『ファッション未来塾』にはもう一つ大切な授業があります。それは洋裁の実践授業です。
1枚のドローイング(デザイン画)から、班ごとに型紙をひき、生地を裁断し、最終的に1枚のシャツを縫い上げます。
これは、シャツの仕立て具合いを比較しあう「型出しの授業」と言います。シャツづくりの基礎知識を勉強する実践形式の授業。
「型出しの授業」では、フレックスジャパンも1枚を縫い上げて参戦、プロフェッショナルとして学生と真剣勝負に挑みます!

学生の声
●プレゼンテーションや、作品の手助けをたくさんして頂いて、何度もプレゼンテーションを練り直しました。その度に色々ためになる話を交えながら作り上げていった過程は、本当に充実したものになりました。
(岡田 実果子さん)
●いつもシャツのことに興味はありましたが、こんなに深く勉強をしたことがなかったです。
(カン ジョンソクさん)
●商品企画というものをほぼやったことがなく、慣れない作業でしたが、理解を深めることができました。
ターゲット、ロケーション、推しポイント、コンセプトからデザインへの落とし込みなど、勉強になることばかりでした。
(関根 知子さん)

~授業風景~ プレゼンテーションの練習。相手が聴きやすくわかりやすく。クラス担任の 鈴木 憲道 先生 も機材の調整に大忙し。。。

~授業風景~ 本番を想定したプレゼンテーション。そうそう忘れてた!恥ずかしいけれど、はじめに自己紹介はしないとね!
学生の声
●「日本のシャツ」というテーマで、改めて「日本人とは何か?」「日本らしさとは何か?」を考えるきっかけになりました。
(堀内 康平さん)
●留学生の私にとって、メンズのシャツの知識をもっと理解できたことで、とても勉強になりました。
(パン イケツさん)
●「日本のシャツ」というテーマを聞いて、あまりピンとこなくて、日本のわびさびについて調べていたけど、その後テーマを3回も変えました。日本人と外国人の感じ方の違いだったり、私たち日本人でも知らない日本のことなど、たくさんのことを知ることができて良かったです。
(渡辺 美佑紀さん)

~授業風景~ 羽田 武幸 先生 とみんなで相談しながら進めていきます。

~授業風景~ フレックスジャパンからパタンナーの 栗山 唯 さん と 田中 裕美 さん が来校。プロの話はとても新鮮です。

~授業風景~ 講師陣もガチンコ勝負!
4月の開講から、はや2ヶ月半。
6月中旬になり、最終発表までなんどもなんども企画を組みなおしては、進んだりつまづいたり、また大きくつまづいたり。
ある日の放課後。
日もすっかり落ち、教室の外はもう真っ暗です。壁時計に目をやると8時過ぎ。
そんな中、企画の内容にダメだしをされた学生が、仲間を束ねて必死で喰らい付きます。
「先生っ! みんなで決めたのにこれじゃダメ!?」
企画、それにそったデザインと仕様。肝心の生地さえも決まらなければ、作品の縫製には取り掛かれません。
出遅れた班、もうプレゼンの演出にまで進んでいる班。グループの進捗具合はそれぞれ。否が応にも、長野が目前に迫ってきました。
さあ、一体どんな【日本のシャツ】が出来あがるのでしょう。
Part2へ続く
取材/わいがや倶楽部 編集局