
番外編
ボッティチェリも眠る、オンニサンティ教会 Chiesa di Ognissanti

フォリア真理さんの取材を終え、お店から歩くこと数メートル。
立派なファサードの教会をみつけました。
それほど観光客で混んでいる様子もないのですが、気になったので入ってみることにしました。

いつも感じるけれど、教会の空気というのは本当に不思議なもの。
言葉にはできない静謐な空間が広がっています。

祭壇に一礼をし、静かに教会内を見ていきます。
ゴシック建築とは違いステンドグラスや光はないものの、壁面にはすばらしい絵画がならびます。
天井のフレスコ画は見上げると、天国が本当にあると信じさせてくれるような感覚になるほど。
キリスト教芸術の素晴らしさを肌で感じます。

この教会は奥に広く、またそこに驚きが隠れていました。
メイン祭壇を横に、まず左側にはジョットの作品「十字架磔刑」があります。
薄暗い教会の中に、まばゆい光が放たれています。

そして祭壇右手には、『ヴィーナスの誕生』の画家、ボッティチェリのお墓がありました。
墓碑の前には、彼を愛する人からのメッセージが届けられています。



「ヴィーナスの誕生」のモデルと言われているシモネッタ・ヴェスプッチ。
彼女は23歳の若さでこの世を去りますが、ボッティチェリにとって精神的な恋人だったそうです。
そんな彼女と同じ場所に埋葬されることを望んだボッティチェリ。
いま、2人はこの教会の片隅で、共に眠っていました。

まだ気になったので奥にあった扉を押してみると、中庭につながっていました。
ここも隠れた場所のようで人影もなく、壁画が続く回廊をゆっくり進むみます。
すると次は別室が。
ここもいいのかな?と覗いていると、「名前だけここに書いて、あとは中を自由にどうぞ」と、優しいおじさんが案内してくれました。入ってみると、なんだか食堂だった場所のような空間で、その正面にギルランダイオ作の「最後の晩餐」がありました。

「最後の晩餐」と言えばレオナルド・ダ・ヴィンチですが、たくさんの場所でいろんな画家によって描かれています。オンニサンティ教会にある最後の晩餐は、裏切り者のユダがだけが手前に描かれています。
きっと何か意図があるのでしょうね。知りたくなります。
それに、丸みを帯びた壁面に描かれているわけではないのに、絵の奥行を感じる立体的な絵です。

これで、オンニサンティ教会の見学はおしまいですが、知らず知らずに立ち寄ったところに、思わぬ発見と感動がありました。
観光ブック無しでも、たまに自分の足で進んでみるのもいいものですね。
副編集長:山口絵美